『カウンセラーを本当に辞めたいと思ったこと~師匠との出会い~』

                               

『カウンセラーを本当に辞めたいと思ったこと~師匠との出会い~』

「カウンセラーを辞めたいって思ったことありませんか?」ってよく聞かれます。

「ありますよ~」って答えるんですけど、その思いを初にして最大に感じさせてくれたのが“師匠”でした。

彼女は私がボランティアカウンセラーだった時代に「ちゃんとカウンセリングをして欲しいから」という理由でお金を振り込んできたツワモノ。
そして、今の彼氏(不倫)のこと、お母さんとのこと、仕事のことなどをどどどどどどと語るクライアントさんだったんです。

ただ一方的に話してくれるんならいいんです。
秘儀「聞き流しの術」を使えばいいんですから!(←なんじゃそら(笑))

でも、彼女、時々こう聞き返してくるんです。
「今、私、何て言ったか、根本さん、聞いてました?私が言ったこと復唱して下さい」

ええーっ!?

私はメモを取りながらお話を伺うタイプなんですけど、たまたまボールペンの付きが悪くて気が逸れてた、部屋の外で物音がしたからそっちに気を取られてた、彼女が言った意味を考えてたら話を聞きそびれた、、、まさにそんなタイミングで「復唱して下さい」が来るんですね。

女って怖いですね・・・(←そこ?(笑))

しかも、彼女は45分のカウンセリングのうち、40分は自分の話をします。
その間、私の質問はすべてスルーです。

彼女「それでね、こうでね、ああでね、こんなことがあって、それで私めっちゃむかつくから彼に言ってやったのよ。」

私「それで彼は何て答えたんですか?」

彼女「それでも気が収まらないから、しばらく連絡を取らないようにしてたら、ますます腹が立ってきて、それで昨日、仕事帰りに会うことんして思い切りぶちまけたのよ」

私「それでどうなったんですか?」

彼女「昨日は朝からお母さんとケンカしてむしゃくしゃしてたので、余計にヒートアップしてしまって。そういう意味では彼、かわいそ。」

みたいな感じです(笑)

いつしか、質問することを諦めて(苦笑)相槌を打つだけの私になっていました。
で、ある時電話の切り際に彼女はこんなこと言ってくれたんです。

「根本さんっていつも最後の5分だけいいこと言ってくれますよね?」と。

「お前、それくらいしか俺の話聞かねーだろ!」と心の中で思ったのは言うまでもありません!

こんなカウンセリングが月1回ならまだしも、毎週火曜日と木曜日の夜9時から毎週続くんです(笑)
今から思えばすごいな、よく自分持ったな、と思います。

でも、思いません?それだけよく40分も話し続けられるネタがあるな、と。
火曜日は分かります。でも、木曜日は前回から2日しか経ってないのにそんなに話題があるの?って思いません?

そうなんですよね。話題があるときもあるんですけど、無いときは酷いもんです。
20分くらいダダダーッと話した後、

「じゃ、根本さん、質問して下さい」
「もう私、話すことないんで、根本さん話してください」

と無茶ぶりが来ます。
ええーっと沈黙が続くと

「お金払ってるんだからちゃんとしてください」
「何か質問してくれないんだったら答えられないから早く話してください」

なんて突っ込まれます。

よくやってたなあ、俺。偉かったなあ・・・。と今なら思えます。

そんなカウンセリングが数か月続いて、根をあげたんです。
「もうカウンセラー辞めたい」って。
我が家に遊びに来ていた先輩(女性)に相談したんですね。
彼女はいつもの優しい笑顔を浮かべてこう答えてくれました。

「うんうん。頑張ってね。」

それ以来、彼女のことを「鬼」と呼ぶことにしたのは言うまでもありません。

でも、ある時気付いたんです。
彼女の後の夜10時のカウンセリングがものすごく楽で、そして、元気で、テンションが上がって、一所懸命になれることを。
少々ネガティブできついクライアントさんが来ても、全然平気になってることを。
クライアントさんから責められたとしても、傷つかない自分になってることを。

だって「あの人に比べれば100倍マシ」なんですもの(笑)

いつしか、彼女のことを「カウンセラー養成ギプス」、略して「師匠」と呼ぶことにしたんです。

そして、気が付くと彼女は私の一番のファンになってくれてました。
「面談カウンセリング始めるんです」って言った直後に予約してくれました。
まだ面談の値段も場所も内容も決まってない段階で。
事務所はパニックになってました(笑)

「講座するんです」と言うと、「私、人が多いところは嫌い」と言いながらもちょくちょく顔を見せてくれました。一番後ろの端っこが定位置でしたけど。

私もだんだん彼女の扱い方が分かってきますから、彼女が悪態ついても拗ねても捻くれても全然平気になってました。

そして、だんだん彼女も落ち着いて、いつしか、距離が開いて行ったんです。
「もう終わりにします」(ってセリフは3回くらいは聞いてるんですが)
と聞いたときには何か大きな仕事を終えたような気持ちになったことを覚えています。

ほぼ15年前の話です。
そのお師匠さんのお陰で、今の自分があるんです。
だから、今となっては感謝ですね。

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