『カウンセラーってなぜ話を聴くの?~感情論と僕の場合~』

                               

『カウンセラーってなぜ話を聴くの?~感情論と僕の場合~』

カウンセリングって基本的に「話を聴いてもらうところ」てイメージが強いようです。
日本に定着している非指示型のロジャース式(来談者中心療法)では、傾聴して共感して受容して、というプロセスを重視しますよね。

話すことでどんな効果があるんでしょう?

感情って「丹田」の辺りで生まれて、上に「上がって行く」と言われています。
感情は感じてあげたら解放されるのですが、それが「ハート」。胸の真ん中です。
「胸が熱くなる」
「胸が痛い」
「胸が張り裂けそう」
等、「胸」は感情に関する表現が多いですよね。

そこで感情を燃やして解放してあげるのですが、その時に抑圧すると胸が詰まったような感じになります。

さて、そうして感情を燃やすのはじっと自分の感情と向き合うのもいいのですが、誰かに聴いてもらうとその速度はグッとアップします。
自分の話に共感して受容してもらえたら、さらに感情は早く燃えていきます。

話すとスッキリする、のはそのためなんですね。
特に感情の量が男性に比べてグッと多い女性はだから「話し好き」な人が多いんです。
逆に「話さないと苦しい」という、我々男性からするとまったく想像できない世界観をお持ちなのです。

話すだけでなく、涙を流す、身体を動かす等でも感情は解放されていきます。

カウンセラーがクライアントの話に共感して、受容するのは、その話そのものではなく、その感情(気持ち)なんですよね。

「失恋しました」という主訴に対して、その失恋したことでクライアントさんが感じている「辛さ、寂しさ、悲しみ、不安、怒り等」に「共感」するわけです。
だから「それは寂しいよね」という言葉を返したりするのです。

「どんな感情を感じているのだろう?どんな気持ちなんだろう?」というのがカウンセラーが聴くポイントになります。

ここまでが非指示型カウンセリングのアプローチ。
とてもクライアントさんを尊重し、大事にするスタイルですよね。

もちろん、僕も少しはこれをやっています。少しは・・・。たぶん・・。

僕は日本では珍しい「指示型」のカウンセリングを学んできました。
とはいえ、師匠の一人である泰三氏は傾聴もできるカウンセラーだったので、その重要性は口からチャーハンを飛ばしながら何回も伝えてくれました。

しかし、もう一人の師匠である平氏は「45分の電話カウンセリングでクライアントが話せるのは3分まで」という無類の話好き(?)で、彼を師事する以上「一を聞いたら、十、返す」ことが半ば脅迫観念のように襲い掛かってくるのです。

ちなみに、そのお陰で僕がカウンセラー向けの講座を担当する時には「平を目指さないでください。あれはカウンセリングではありません。あれは“平”というセラピーの手法ですので真似しないでください」と口から泡を飛ばしながら何度も説明するハメになるのでした。

ただ、一を聞いて十返す、というテクニックは、セミナーでクライアントさんから質問されるときには大いに役立ちますね。

さて、指示型(提案型)のカウンセリングでは、クライアントさんのお話を聴くのも問題解決のための「情報収集」です。

僕が学んだカウンセリングのアプローチはざっくり言えば「クライアントさんの今の状況を把握して、その問題を作っている感情を癒し(解放し)、すっきりさせたところで“愛”や“親密感(つながり)”を作っていく」というもの。

そのためにロールプレイやイメージワークなどのセラピーをするので、そのセラピーのためにいろいろと「事情聴取(!?)」をしなきゃいけないのです。

その「事情」というのは「実際に起きているできごと」でもあり、「その出来事で自分自身が感じていること」や「潜在意識の中にあるであろう感情群」であり、「その背景となる過去のできごと」なのです。

だから、僕のカウンセリングでは、大風呂敷を広げるようにクライアントさんの人生を俯瞰していきます。
もちろん、今、リアルに感情が噴き出て来てる場合にはそれを解消することを第一にしますが、少し落ち着いて来たら、その方の人生を聞いていくんです。

どうしたら問題が解決できるか?という情報を得るために。

そして、「ああ、それはやっぱり旦那との関係って言うよりも、おかんの方が問題やんね」とか「これ、すごく分かりにくいけど、今の彼のことでそんだけ辛くなることってないはずなんよね。もしかすると、その2つ前の彼に対して未消化になってる感情が今、出て来てるのかもよ」とか「ずっと誰のことも当てにせずにやってきたから今、ほんと行き詰ってるんですよ。そりゃあ、あのお父ちゃんの元ではしょうがないと思いますけどね。でも、今はその部下を信頼してみましょうよ。」みたいな感じの話をしていくんです。

そうすると、非指示型ではあまりしちゃいけないという「提案」も具体的にできるようになるんです。

「とりあえず、お母さんに会いにいって『今までずっと寂しかった。一回でいいからギュッと抱きしめてくれへん?』って頼みに行きましょうよ」

という現実的な提案から、

「まずはその元々彼への思いを手放していきましょう。ちょっとイメージワークして、その感情を少し解放してあげましょうか。それで、今日から週に1回、彼に手紙書いてください。もちろん、出さなくてもいいから」

という感情面+現実的な提案をしていくのです。

これは僕の場合、でした。

だから、僕はカウンセラーやセラピストというよりは「問題解決屋」というイメージを自分自身に抱くようになったのです。

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